はじまりは
「マグライナー買わないの?」
機材を運ぶカートとしてここ数年で人気を博しているアウトドアワゴンに機材の運搬は頼りきりだった私ですが、ディレクターやクライアント用のモニターを使い始めたり、機材を組み立てたまま移動するのが難しかったりと、アウトドアワゴンのウィークポイントが現場でのフットワークに影響が出始め、どう解消すべきかに頭を抱えていた只中に飛んできた一言。
「マグライナー、買わないの?」
マグライナーを自作する知り合いの映像作家の方のブログなどを見ていたりしていたので、自分で作れないことはないんだろうなとは思っていたのですが、私の自動車は軽自動車。
確実にマグライナーは車に乗らない。
しかし、撮影現場がより円滑に進むのであればマグライナーが欲しい。
あれ?本当に必要か?
もしかすると逆に効率悪くなる可能性があったりする?
アウトドアワゴンで出来ないこと
そもそもアウトドアワゴンだけではダメなのか?
アウトドアワゴンに出来ない現場での役割とは一体何だろう。
私はアウトドアワゴンに出来ないことは大きく2つあると考えました。
・機材を組んだ状態で運べない
無理矢理乗せればいけないことはありませんが、機材に機材を重ねて運ぶことになる上、照明やリグを組んだカメラなどをそのまま乗せるにはあまりにも不安定。
急いで移動しなければいけない現場ほど、雑に乗せがちで、最悪振動による破損もありえるので、いつもヒヤヒヤしていました。
・モニタリング用の台などにはならない
当然ですが、天板がない分アウトドアワゴンは作業台には不向き。
ちょっとカメラを置いたり、ディレクターやクライアント用のモニターやPCを置いて作業することは難しいです。
天板を後付けするオプション製品もありますが、高さがないので撮影現場ではそこまで使えません。
マグライナーに出来ること
現場における作業台の代わり
アウトドアワゴンに出来ないことを考えると、マグライナーに求めるものは、この一言に尽きる思います。
- 地面に物を直接置かないので汚れないし壊れない
- レンズの交換やリグの組み替えがスムーズに
- ケーブル類に砂やゴミが入らない
- モニターやPCを置いて作業できる
マグライナーを探す上で重視した点
軽自動車に乗ること
必要条件として軽自動車に乗らねば意味がない。
私が乗っている軽自動車は日産 デイズルークスなのですが、こちらの室内寸法の高さは約140cmなので、折り畳んで140cm未満でなければスムーズな積み替えが難しい。
ちなみに足元に寝かせるように置いた場合、横幅は111cm未満でなければならない。
何だか数学の文章問題のような文章になってしまいましたが、クリアしなければいけない条件はなかなか厳しそうです。
折り畳める or 分解できる
確実に折り畳めるか分解出来なければ乗らないことは間違いないので、これも必要条件です。分解できればかなりコンパクトになりそうですが、折り畳むくらいの方が現場ですぐに対応できるので、折り畳み>分解で探すことにしました。
耐荷重
とにかく重いものが乗ればOK!
全体で150kgくらい乗れば何とかなるだろうと考えていました。
アウトドアワゴンがそれくらいだったので。
大きなタイヤ
オフロードやアスファルトの上を行くことが結構あるので、大きくなくとも頑丈なタイヤであることは結構大切。
必要条件と十分条件の間くらいです。
ただ、タイヤが満たされずとも最悪別売されているタイヤをどうにか接合させれば何とかなるかな?とか考えていました。
2段以上
いわゆる台車になってしまうと、作業が出来なくなるので最低2段。理想は3段で探しました。
これは必要条件ですね。
購入に踏み切った経緯
以上を踏まえて色々探していましたが、なかなか見つからない。
ガチなやつを見つけましたが、金額が¥500,000付近と流石に高すぎる。
やっぱりマグライナーなんて身の丈に合っていないのだろうか。。。
そう思っていると、これまたご縁あって知り合いのプロデューサーが所有している機材を見せていただける機会が。
そして出会ってしまったのです。こいつと。
少し扱わせてもらうと、天板がプラスチックなので耐久性に少し不安を覚えましたが、結構いい感じ。早速条件を照らし合わせてみることに。
軽自動車に乗る / 折り畳める or 分解できる
折り畳み時の高さが132cmなので、足元に寝かせることは出来ませんが、8cmの余裕を持って立てて乗せることが出来ます。
折り畳み式なので、パッと積み下ろしが可能な点も良いですね。
耐荷重
各棚の耐荷重が45kg、総耐荷重が135kg。
全体で150kgくらいかなーと思っていたので、耐荷重も良い感じ。
大きなタイヤ
これだけはクリアできませんでした。どうにか付け替えれないかなーとは考え中。
とはいえめちゃくちゃ小さいわけでもないので、岩場などでなければ良いかも。
2段以上
3段あってなお良し。
以上を持ちまして、このカートが同じラインナップの中では耐荷重も高く、最有力候補になりました。
早速購入
初期の外観
早速届いたツールワゴン。
正直、全体的にチープな感じはしますが、結構スムーズに動いてくれるので動作は良い感じ。
45kgの重さに耐えるというのは全然余裕がないんだなと感じます。
40kgの人が乗っても大丈夫!という訳ではないんだなと思い知らされます。
当たり前ですが、上手く重心を分散させたほうがより良いと思います。
タイヤは大人の男性のこぶし大。よくあるカートの大きさだなという印象です。
カスタム
このままでも普段使いには問題なさそうなのですが、より安定して便利に使えるようにカスタマイズしてみました。
滑り止め
普通、マグライナーといえばパンチカーペットを敷くことが多いのですが、このカートが長く使えるかも分からなかったので、とりあえず載せているものが落ちない処理をしておきました。
雨に濡れても染み込まないしね。
クランプ
L型のクランプを2つ購入し、一番下の棚板に固定。
こうすることでフラッグやカポックを安定して持ち運べます。
まだ幅に余裕があります。
折り畳むと翼のようになります。
使用感
軽自動車に積み込む
思ったよりもギリギリになってしまいましたが、無事積み込むことには成功しました。
ピッタリすぎて少し手間取りそうですが、とりあえずヨシ!
機材を乗せる
積んだ機材はざっくりですが以下の通りです。
- seetec 17.3インチ モニター
- FNNEMGE ポータブル電源
- RS2 + Blackmagic Pocket Cinema 4K
- NP-Fバッテリー 数十個
- Vマウントバッテリー 3〜4個
- iPad Pro
- 比較的軽量なズームレンズ3本
- Flowtech 75 / Sachtler Ace L
- アルミスタンド
- Leofoto ranger 三脚
- Neewer パネル型LEDライト
これだけ載せても結構すんなり動きますし、棚板も結構大丈夫そう。
残された課題
タイヤを交換することです。
舗装された道路や室内の移動などは全く問題ない品物でしたが、悪路での走行は多分このカートでは無理です。
なのでどうにかして取り替えるか…しかしタイヤをパワーアップさせたとしても、四隅のアルミ支柱がその負荷に耐えられるかも怪しいので、どうしたものか。
割り切って使うのが一番なのでしょうが、何とも言えませんね。
まとめ
残された課題はあれど、比較的良い品物であったことに間違いはなく、どの現場にも一台あると格段に撮影現場がスムーズに進行するであろうマグライナーへと変貌を遂げたツールワゴン。
いつか本当のマグライナーで撮影に臨みたいものですが、その日まではこの軽自動車特化型マグライナーに頑張ってもらうことにしましょう。
ちなみに(24年4月4日更新)
このカートでは対応できない案件が発生してしまい、結局マグライナーを自作してみたので、そちらの使い勝手や本当にマグライナーはあった方が良いのかを考えてみましたので、お時間がある方はこちらも併せてどうぞ!