DEMOREEL

カメラマンがお話しする映像・写真・カメラのこと。訪れた場所のこと。生活のこと。

Panasonic GH5を仕事・プライベートの映像制作で1年間使用してみた感想【購入を検討している人へ】

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購入のきっかけ

事の発端は2018年3月に遡る。愛用し、私の唯一の動画撮影機材であったSONYのPXW-FS5が盗難に遭ったのだ。

警察からは「いつ返ってくるのかは分かりません」と伝えられ、次の仕事が差し迫っていた私にはカメラを購入する以外選択肢はなかった。
しかし、機材が返ってくることはこの時点で保障されていたので、高い機材を買うのはとても惜しい気持ちでいっぱいだったし、ましてや立ち位置が被ってしまうことも避けたかった。
なので私はいくつかの点に絞って機材の購入を検討することにした。
・FS5よりもコンパクト
・4Kが撮影できる
・グレーディングもやりやすい(10bit 以上)
・予算を¥300,000-以内で抑えたい
・FS5が戻ってきた後でも棲み分けがしやすい
選択肢として上ってくるのは間違いなくαシリーズだと思うし、現に私もαシリーズと悩んだ。
αならFS5のS-Logとも色合わせがやりやすく、同じ特性のLogなので慣れ親しんでいる。
さらにコンパクトで4K撮影も可能だし、予算は若干オーバーしそうだが許容できる範囲内。

購入の決め手

しかし結果として私はGH5を選びました。
なぜαではなくGH5を選んだのか。
購入の決め手はいくつかありますが、その大半は後処理に関することです。

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グレーディング向きなデータで内部収録ができる

αシリーズはFHDも4Kも 8bit 4:2:0 でしか残せません(外部収録では 8bit 4:2:2 で収録できます)
GH5では内部収録で 10bit 4:2:2: で収録で、ビットレートも高く設定出来るので、外部レコーダーを使わなくてもグレーディングがやりやすいです。
運用面ではコンパクト。しかし力強い動画素材が手に入るのは、ワンマンオペレートな日々を送る私には心強い。

予算が安い

私は中古でGH5を購入しましたが、αシリーズのα7IIIの中古と比べると、およそ¥50,000ほどの差がありGH5の方が安い。
この差があればリグやバッテリーなど周辺機材を揃えることができます。
※浮いた金額で購入したリグ達。

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手振れ補正が必要以上に強力

GH5の手振れ補正にはいくつか段階があります。
・5軸手ブレ補正:カメラ内部に備わっているジャイロセンサーがブレを感知して、センサーをブレの反対方向にズラし、ブレを補正する。
・電子手ブレ補正:編集ソフトで手ブレ補正を行う状態と一緒(映像が歪みます)。
・手ブレロック :映す範囲をクロップし、電子手ブレ補正をより強力にする奥義。動きのある映像は歪みますが、三脚を使ったような強力な手ブレ補正です。
手持ち撮影が多いラン&ガンスタイルな現場でかなり役に立ちます。丁寧に撮影をすればジンバルで撮影したかのように感じます。
これらの点から、映像撮影のカメラをGH5に決定しました。

実際に使用してみて

私の手元にGH5が届いて約1年。
仕事でもプライベートでも、FS5が手元に戻って来た時でも、常に撮影には同行してもらいました。
そんな1年間を経て感じたことは以下のようなことでした。

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出張撮影が楽になった

本当にコンパクトです。FS5のボディーが占領していた部分に、本体とレンズが収まってしまうので、荷物が減り格段に重量が軽くなりました。
※その結果と言ってはなんですが、富士山もカメラを持っていけるようになりました!

マイクロフォーサーズでも引ける。ボケる

フォーカルレデューサー付きのマウントアダプターを介して、SIGMAの18-35mm F1.8 Artを使用していますが、引き尻で困ったことはありません(室内などでも)。
思いっきり引きたい人には向いていないかもしれませんが、引けることには引けますし、ボケも必要十分です。

Metabonesじゃなくても良いマウントアダプターは売っている

私はMetabonesじゃないとダメだと思っていました。
正確にはメタボーンズ以外存在しないと思っていました。
Viltroxと出会うまでは……詳しくは別の記事にも書いていますので、そちらをご参照下さい!

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モニターは見辛く、AFには期待できない

どこの製品も同じかもしれませんが、やはりモニターは見辛い。
AFは結構遅いし迷う(もちろん純正レンズでも)。

シャドーにもハイライトにも弱め

V-Log Lは、100IREがスーパーホワイトだと規定した場合、80% よりも上のハイライト部分がクリップされてしまうので、それを考慮した露出設定を行わなければいけないのですが、そうなるとシャドーにブロックノイズのようなものが見え始める。ダイナミックレンジが広いようで狭いのがV-Log Lだと、この時私は思いました。
 
日中の外であれば全然大丈夫で、少し暗いと感じるくらいの室内ではDavinciのノイズリダクションなんかで処理をすれば全然問題ないのですが、やはり限界を意識してしまうことに変わりありません。

肝心のグレーディングは?

やりやすいけど…結構シビアな場面が多い気がします。

色かぶりなどの排除は苦手で、シャドーの処理は結構難しく、慣れが必要です。

今の私の中での立ち位置

現在、私が所有している機材と、その使用用途は以下の通りです。
SONY PXW-FS5:セミナー・講義・中継などの長回し収録 / 体裁を気にするCM , Web-CM
Panasonic GH5 :FS5のサブカメ。BMPCC4Kのサブカメ。三脚を持たずコンパクトに済ませる映像。
BMPCC4K    :Short Filmやweb-CM。PR-Movieなど、ポストの段階でもこだわりが強く出る映像
 
FS5でも映画やコマーシャルフィルムなどの撮影は可能ですが、やはりグレーディングに限界があるのでBMPCC4Kでの対応が増えてきました。
撮影データの容量も、FS5で収録する際はVideo AssistでProRes収録を行うため、BRAWとあまり変わりません。
しかし、FS5の内部収録のMXFはかなり優秀な圧縮技術であることに間違いないことと、見た目の感じでクライアントにも気に入って頂けるので、この2つのカメラは上手に棲み分けが出来ています。
 
さて。
GH5はほとんどの場面において、他2つのカメラのサブカメです。
言ってしまえばFS5がメインの時はBMPCC4Kを。
BMPCC4Kがメインの時はFS5をサブに回せば済む話なのです。
そしてこのタイミングでBMPCC6Kの発表。
もし私がこの6Kを手にしたなら…GH5のメリットは手ブレ補正だけになってしまう…
チラつく「メ○カリ」で「○却」の2文字。

今後の立ち位置

とはいえ、GH5が素晴らしいカメラであることに変わりはないので、このまま保留とさせていただこうと考えています。
一番の問題はBMPCC4Kや6Kをサブカメラに出来るのは、作り込むタイプの映像案件のみ。
GH5のように、軽いデータでも重たいデータでも撮影が出来て、長回しにも対応出来るコンパクトなカメラという点に置いては、Panasonicは唯一無二の存在ではないでしょうか。
他社と比べてバッテリーの持ちも悪くないですし、メイン機の候補から外れても、永遠の2番手○イージのような存在で親しまれるのだと、このブログを書きながら再認識。
誰かの一番にもなれるし、二番手にもなれる。
Blackmagicの方がEVA1+Davinci Resolveのセミナーで、ライバル視している企業というニュアンスでお話をされていたことを思い出します。
GH5は、これからも私の映像案件で活躍し続けます!
…あれ?GH6の足音が…
ファームウェアのアップデートで…なにか…どうにかなりませんか?
最終進化を…最後に進化して欲しい…