DEMOREEL

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X-T4、写真を撮るか?動画を撮るか?【3ヶ月使用したレビュー】

はじめに

X-T3やX-H1の登場により、富士フィルムのミラーレス一眼は多くの写真愛好家やビデオグラファーにとって、SONYのαやPanasonicのGHシリーズのような立ち位置に君臨しました。
・フィルムを選んで撮る感覚を味わえる「フィルムシミュレーション」
・4K動画や近年主流のLogガンマなどに対応し、ポスプロ・グレーディングを考えた動画収録が可能
・映画で使用されてきた「ETERNA(エテルナ)」フィルムシミュレーションの登場
・良心的な価格設定(これは人それぞれかな?)
Logガンマや肉厚な素材で収録できることは抑えつつ、
他社のカメラが高感度やフルサイズ。高解像度であることに注力している最中、富士フィルムは動画や写真の「ルック」に力を注いできた。
多くのユーザーがRAWやLogでの収録を希望しているのは間違いなくポストの段階で動画や写真のルックを思うようにコントロールしたいと考えているからであり、だとするなら色をメインに打ち出した富士フィルムを我々カメラユーザーが認知しないわけがありません。
こうして富士フィルムSONYPanasonicに続き、動画制作用機材として名を連ねました。 

X-T4購入のきっかけ

友人の結婚式に出席することになった私は、いくつか条件を絞って写真用のカメラを探しました。
  • コンパクト
  • 空気感が写る(アナログ的)
  • レタッチしたくない
  • スマホへのアクセスのしやすさ
  • 場の雰囲気を邪魔しない(馴染みやすい)
これらを条件にいくつかのカメラを探し、最終的にRICHO GRとFUJIFILM X100Fに辿り着きました。
価格的には同率で、コンパクトさAFなどの機能面ではRICHO GRが優勢となり、色味もそれぞれ違うコンセプトを元に両者素晴らしい。
ちなみに、特にこだわりが強くない方や好き嫌いが激しくない方にはRICHO GRをオススメします。
私は「場に馴染む」という部分と「空気感が写る」という点が最終的な決定打となりX100Fを購入しました。
その後、私は富士フィルムの虜となり、色々な理由を言い訳にしながらX-T4を購入するに至りました。
前置きが長くなりましたが、ここからがようやく本編です。

外観・操作性

外観

クラシックな外観と周りの光を吸収するノアールなボディに心惹かれる時、手のひらで感じる金属の冷たさからは熱伝導率の高さを感じます(は?)。
満点の星をいただく果てしない光の海も、豊かに流れゆく風も、夜の静寂も、シャッターを開けばどんな物語も写し込める。
そんな信頼感を与えてくれる姿に、私の選択は間違っていなかったんだと思わせてくれます。……はい。

操作性

富士フィルムならではのシャッター・ISO・絞りがそれぞれダイヤル式な点は、電源を切っていても一目で設定が分かるので、電源を入れて再度露出を調節する必要がありません。
「あ、次はこのシーンを撮影するな…このくらいの明るさだろうな…」と想定してダイヤルを回しておけば、電源を切った状態から立ち上げ後スグに撮れるので、常に先回りができます。
サイズがコンパクト過ぎるので、手の大きな男性は少しグリップ感が足りず持ち辛いかもしれません。
持ち辛い方はL形ハンドルやサムレストの装着をお勧めします。 

スチル機としての性能

 AF(オートフォーカス)の謳い文句

「EV-7でも位相差AFで被写体を正確に捉える!」なんて書かれても分からない!
EV-7はどのくらい暗くて位相差AFは何を基準に被写体を捉えてくれるのだろう…
そんな疑問にまずはお答えした後に、体感したAFの精度について話すことにしましょう。
EVって?
EVは「Exposure Value(露出値)」を表しており、明るさを表す指標です。
EV値は0(ゼロ)が基準となっており、EV1やEV-1などの表記で基準からどのくらい明るいのか。どのくらい暗いのかを表しています。
0(ゼロ)の基準
「ISO 100 / F1.0 / SS 1sec」で写真を撮った際、適正露出となる様な被写体の明るさが基準となっており、EV0として表します。
そこを基準に、2倍明るくなったらEV1。4倍明るくなったらEV2。8倍明るくなったらEV3。
逆に1/2暗くなるとEV-1。1/4はEV-2。1/8でEV-3。と表記されます。
EV-7って、じゃぁどのくらいくらいの!
はい。もうざっくりお伝えします。
星空がEV-4らしいので、もはや“闇”の中でも位相差AFが効くということですが…ではそんな場面でもAFが使える“位相差AF”って何?
位相差AFとは?
レンズに入って来た光を2つに分けて被写体とカメラのセンサーまでの距離を測定してフォーカスを合わせる…ごめんなさい。付け焼き刃過ぎて説明ができません。
「前ピン(被写体の手前)」と「後ピン(被写体の奥)」のフォーカス位置を導き出し、被写体までの位置を素早く算出するっぽいです。両端を弾き出せば、真ん中もすぐに出せるでしょ!みたいなノリです。
詳しくは以下のURLよりどうぞ

AFを使用した感覚

いや、そんな暗いだけのところじゃ流石に無理です!
奥か手前にガイドとなる明かりは必要ですし、本当の闇では流石にフォーカスは合いませんでした。
ただし、多くのカメラには「AF補助光」という機能が備わっており、暗過ぎるときはカメラが補助光を照射して被写体を照らし出してくれるので、設定メニューからAF補助光をONにしておけば問題ありません。

AWBの正確性

言うてマニュアルのホワイトバランスには勝てないでしょ?と思っているそこのあなた。前提として写真のみのお話にはなりますが、富士フィルムのオートホワイトバランスは、他のカメラの会社と少し違います。

カメラのオート設定はマニュアルで再現できることが普通です。しかし富士フィルムは独自の測定と処理を行っており、その精度はマニュアルで再現することが難しいレベルです。

「一発で決まる」というと大袈裟ですが、そんな感じです。

ただし、やはり蛍光灯の下でのオートはあまり良くない印象。

ちなみにそんな話がどこに書いているのかってお話ですが、以下に記事が記載されています。

 

高感度ノイズについて

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JPGでノイズリダクションをOFFにして撮影した場合、ISO3200くらいまでは割と余裕があるように感じます。ISO6400よりも上になってくると流石にディティールが怪しくなってきたり、現像時に余裕がないように感じられました。
とはいえ綺麗なんですけどね。本当に。貼り付けている写真はISO2500にフィルムグレインを設定で追加しています。

テザー撮影はちょっと不便

テザー撮影を行う際、LightroomやCaputure OneなどのRAW現像・データ管理・編集ソフトを使用している方が多いのではないかと思いますが、どちらのソフトを使用する際にもプラグインが必要となります。FUJIFILM専用のFUJIFILM X RAW STUDIOというソフトもありますので、そちらを利用する方が良さそうです。
 
FUJIFILM X RAW STUDIO
 
Lightroom + Tether Plugin
(GFXシリーズをお使いの方は無償プラグインが用意されています。)
 
Caputure One Pro FUJIFILM

JPG撮って出しが追い込める

カラークローム・エフェクト / グレイン・エフェクト

シャドウ側やハイライト側のトーンを調節することが出来る「トーン調整機能」は、最近どのカメラにも搭載されていますが、カラークローム・エフェクトやグレイン・エフェクトは他のカメラにはない機能です。

グレイン・エフェクトはフィルム粒子を強・弱の2パターンで、どのくらいの量を適用するのかが選べます。

また、粒子の細かさも2パターンで選べます。

カラークローム・エフェクトは彩度が高い部分(赤や緑など)に深みが出せます。

特に青色の演出に特化したカラークローム・ブルーが別で用意されいます。

▼【カラークローム エフェクト / グレイン エフェクトなし】▼

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▼【カラークローム エフェクト / グレイン エフェクトあり】▼

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▼【カラークローム エフェクト / グレイン エフェクトなし】▼

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▼【カラークローム エフェクト / グレイン エフェクトあり】▼

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なぜこのような機能が備わっているのか? 

RAW現像が当たり前になった昨今。JPG撮って出しを使うことはプライベートでも仕事でも中々ありません。…よね?

ただ、JPGで撮って出ししたい状況や心構えみたいなものは一定数あると思いますし、何より撮った状態が仕上がりイメージに近ければ近いほど撮影者の気持ちも高まりますし、後々の調整に無理や負担が少なくなります。

であれば、出来る限り撮った状態を完成イメージに追い込むことが出来て損はありません。

手に取り感じた設計思想

超現場主義というか、被写体との向き合い方や撮影する瞬間を大切に出来るようなカメラがFUJIFILMなのかなぁと感じています。

後から調節するのも作品造りの上ではとても大切な事だと思いますが、シャッターを切る手前で撮影者が何を思い、何を感じて表現しようとしているのかは、後からどうにか出来る事ではありません。

上記で紹介した機能は、撮影前に色々調節をする必要があります。

じっくり腰を据えて風景を撮影している方には、被写体と対話するような機能になるでしょう。

目についた物を瞬間的に切り取るストリートスナップをしている方なら、事前に設定を追い込んでおく必要があるため、撮影前にどのような表現をしたいのかを自分の中で深堀する手助けをしてくれる機能になるでしょう。

ISO・シャッター・F値が全て独立したダイヤルで操作できるという機構も、ただの「アナログいい感じじゃね?」的なものではなく、今自分がどんな表現を行おうとしているのかを表してくれています。

とりあえずの設定ではなく、それぞれの設定に自分なりの考えや意思を持って向き合わせてくれます。

そこに到るために、クラシックな外観や機械を触っている感覚で、カメラを持つ喜びや操作する喜びを分かりやすく感じさせることにより、写真や動画に触れる人の間口が広がり、この写真・動画界隈が盛り上がることを狙っているのではないかと思っています。

FUJIFILMさんが毎年開催している「10万人の写真展」。

2020年は新型コロナウイルスの影響により開催が見送られましたね。

この写真展は他のカメラメーカと違い、作品を観た人がその場で、しかも直筆で書いた感想がわざわざ郵送されてきます。

「"PHOTO IS"想いをつなぐ。」というキャッチコピーのこの写真展。FUJIFILMさんはこの写真展だけでなく、カメラや写真全体を通して、このキャッチコピーを実現しようとしているように、私は感じています。

動画機としての性能

色彩・トーンの表現力

DCI-4Kに対応し、内部収録でALL-Intra、400Mbpsに対応。

Long GOPではありますが4K60p(59.94p)、FHDでは240fpsを200Mbpsで収録可能。

特殊な撮影でもない限り十分なスペックです。

そしてなんといっても富士フィルムならではのフィルムシミュレーションが動画に使えるということです。

F-Log & ETERNA

近年主流となったLogガンまでの収録に加え、ETERNA(エテルナ)という富士フィルムが販売していた映画用フィルムを再現したフィルムシミュレーションが使えます。

ただ、ETERNAをF-Logで再現するLUTが無料配布されているので、正直F-Logで撮影すればいいと思います。

ETERNA(エテルナ)ってどんな映画に使われたフィルムなの?

THE 有頂天ホテル」や「恋空」「容疑者Xの献身」などなど、数々の日本映画を筆頭に「ミスト」や「イントゥ・ザ・ワイルド」などのハリウッド映画でも親しまれたフィルムです。 淡く柔らかい映像だなーという印象です。

手ブレ補正

通常の手振れ補正に加え、ブーストモードというさらに強力な手ブレ補正があります。
各社色々な手ブレ補正があると思いますが、SONYPanasonicFUJIFILMCanonの各社使ってみて感じたことは、GHシリーズの手ブレ補正が一番バランスが良いなという感じです。ただ、フィックスで画を切らない限りブーストモードの類は切っておいた方が自然なのは、どの会社も同じですね。特にハイスピード(スローモーション)撮影時は切っておいたほうが良いですね。

意外とモアレ・偽色が出る4:2:0

購入後、ここだけが残念なところなのですが、動画撮影時に偽色やモアレが出やすく感じます。

もちろん発生しやすいシチュエーションばかりだったのかもしれませんが、他のカメラで撮影した時には出ていなかったので、やはりそういうことなのかな…という感じです。

ここは後日ちゃんと調べてみようと思います。

FUJIFLM X-T4とは

撮影現場に立つカメラマン、写真家の目線に立って設計されたカメラであり、シャッターを切る前の、被写体とどのように向き合うのかに集中させてくれるカメラだと思います。フィルムシミュレーションに目が行きがちですが、思想・設計がやはり素晴らしい。

まとめ

ここ最近、SONYのα1やα7s3。Canon EOS R5などハイスペックな機種が次々と登場する中、SIGMA fpや今回のFUJIFILM X-T4などの、トーンや色彩にこだわったカメラ。色々な方向にそれぞれの枝葉を伸ばしていますが、正直どの機材を購入しても問題ないくらいハイスペックなものばかりです。

どれを使っても良い映像や写真は撮れるはずですので、自分が使いたいカメラや、やりたいことが実現できそうなカメラを手に取り、日々作り続けることの方が大切だと思います。

インスタグラムの方に私がFUJIFILMのカメラで撮った写真を投稿していますので、もし見ていただけると、すごく嬉しいです!

 
 
 
 
 
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