はじめに
アマチュアからプロの方まで多くのビデオグラファーが一度は「滑らかなカメラワーク」という壁に突き当たり、頭を抱えた経験があるのではないでしょうか?
最近ではDJI RS2やMOZA AirCross2、Zhiyun Craneなどのジンバルを用いたカメラワークが増え、私自身もお仕事で多用していますが、やはりスライダーを用いた水平移動と安定した雲台でのパンやティルトが必要な場面も未だに多くあります。
2015年、Libecこと平和精機工業さんよりALXシリーズと呼ばれるスライダーが発売され、多くのビデオグラファーが重宝する名機となりました。
リーズナブルでコンパクト。多くの方々に愛用されたALXシリーズにも一つ欠点がありました。それは使えば使うほどレールのガタ付きが発生し、顕著に画に現れてしまうということです。
どんな機材にも劣化は付き物ですが、使う頻度が高い方は1〜2年でガタガタし始めて、やがて使い物にならなくなってしまいます。
私もレールを買い替えるなどで対応していましたが、やはり安定したカメラワークが難しく、スライダーの買い替えを決意。
あらゆるブログ、ニュース、YouTubeなどを見て、今回購入した「Syrp Magic Carpet Pro」に出会いました。
Syrp Magic Carpet Proの特徴
主な特徴は三つ。
・格納型フライホイール搭載
・32kgまでの耐荷重
・レールを無限に拡張可能
格納型フライホイール
この機能については私がスライダー選びの際に参考にさせていただいた記事と動画を見て頂いた方が良いと思います。
動画では実際にスライドしている動画が見れます。
Tomohiro Ota様、分かりやすい解説をありがとうございます!
Magic Carpet Proに搭載されているフライホイールについては、この動画の10:19からを見ていただければ分かると思います。
見た目もかなり似ています。
32kgまでの耐荷重
ほぼなんでも乗ります。
カメラ単体の重量のお話であればSONY FX9が約2kg、ARRI AMIRAが約4kg、SONY F65が約5.3kg、ARRI ALEXA LFが7.8kg。
Magic Carpet Proのユーザーはフリーランスのビデオグラファーや小規模の撮影プロダクションが担当する規模のCMやVP、MVなどが大半だと思います。
なので雲台を含めても10kg以下の物を乗せて運用することが多いのでは無いでしょうか。
ギリギリの重量を乗せたり、レールの幅からはみ出るような機材を乗せた場合、いくら高性能なスライダーと言えど、ガタ付きや、偏った重量による変なアソビが出たりするので、10〜15kg程度をMAXに考えていれば良いと思いますし、全然余裕です。
レールを無限に拡張可能
これが意外と使える機構かもしれないと感じています。
地方の動画制作では「ジンバル > スライダー > レール 」の順に機材の使用頻度が高いように感じていますが、大手レーベルのMVやCMの裏側を投稿しているinstagaramやメイキング動画を見ると、やはりクオリティが高く、力強い画はレールを用いたカメラワークが多いように感じています。
特機がしっかりしているということですね。
しかし、予算が少ない案件ではそんな大掛かりなことは出来ませんし、レールを轢く幅もありませんよね。
それを解決してくれそうなMagic Carpet Proのレール無限拡張機能。本当にありがたいです。
Magic Carpet Proの外観
なんかいい感じに全体を見せたかったんですけど、家の中で広げることが出来ないのでまずは撮影現場に実際にセットしている様子から。
実際に組み立てるとこんな感じです。
ご自身が使用している三脚やカメラと比較したり当て込んで想像してみても良いかもしれませんね!
ディティール
キャリッジ / 取り付けネジ
キャリッジ部分(三脚の雲台を乗せるところ)を詳しく見ていきましょう。
中心のコルク地のさらに中央に三脚を取り付けるためのネジがあります。
このネジは3/8と1/4の規格が用意されています。
ネジはスライダーの端のネジ穴に埋め込まれています。
フライホイール
次はキャリッジの裏側です。
銀色の部分がフライホイールです。これ自体ほぼ鉄塊なので、全体の重量を底上げをしています。ちなみに、私が購入したSyrp magic carpet pro medium slider kitは自重が5.7kgもあります。軽い筋トレですよね。
話がそれましたが、このフライホイールの機能をON/OFFするスイッチもちゃんと備わっています。
キャリッジの横にスイッチが搭載されており、ここでフライホイールをON/OFFできます。
OFFで使うことってあるの?と思いましたが、きっとこれは同社から発売されているタイムラプス用のユニットを使用する際にOFFで使用するものであると考えました。
このユニットはロープでスライダーの両橋と繋ぎ、電動ロープを巻き上げながらキャリッジ部を指定した範囲と速度で動かすというものです。
ここにあえてテンションの掛かるフライホイールをONにして使用してしまうとユニット自体に負荷が掛かってしまいます。
そのため、この機能のONとOFFが選べるようになっているのだと思います。
クイックリリースプレート部分
では、独自規格のクイックリリースプレートを取り除いてみましょう。
中央には注意マークと「90mm QR plate」と書かれていますよね。
その上に矢印とプラスマーク。そして黒いダイヤルのようなものが見えると思います。
このダイヤルをプラスの方向に回せば、フライホイールがより強力に(圧が掛かる)なり、よりスムーズな動作が可能になります。
その分押す力も必要になりますので、早い動きは難しくなります。カメラワークに合わせた調整を行いましょう。
さらに、クイックリリースプレートを取り外したフチをなぞるように、円形に銀色のポッチが並んでいるのが分かると思います。
これがクイックリリースプレートをロックしてくれています。
ざっとこんな感じで、スライダーの説明をさせて頂きました。
次は実際に使ってみた感想を、私目線でのメリットとデメリットにまとめました。
メリット
撮影に集中できる
スライダーを使っていると、どうしても滑らかなスライドをしたいという気持ちに意識を持っていかれがちです。
私もLibecのALXシリーズを使用していた時はそうでした。
しかし、Magic carpet Proを導入して以来、スライドに意識を持っていかれることが無くなったため、パンやティルト、フォーカスに思う存分集中することが出来るようになりました。
結果、撮影のリテイクやスライダーの往復も減ったので撮影時間の短縮にも繋がり、一石二鳥な気分です。
デメリット
とにかく重い
ダナドリーやレールドリーを使用している方々からすると「そんなものはまだ軽い!」「一人で使えるレベルで甘ったれるなよ小僧!!」と言われてしまいそうですが、重いものは重いのです。
5.7kg…約6kgが重たくないわけがない!だってRONIN-SやRS2ですら重く感じるでしょう?
そのうえ、カメラや三脚もあるんですよ?重くないわけがない!
正直高額な買い物
これは…あくまで私の意見ですので悪しからず。
スライダー自体もそこそこの金額ですが、このスライダーとカメラを乗せることができる強固な三脚も必要になってきます。
弱い三脚しかない場合は二本用意してスライダーの端と端で支える必要があります。
そこまで見据えると……ね?お高いでしょう?
まとめ
デメリットの部分は、主にジンバルや手持ち撮影を軸に撮影を行われている方からすれば、とても大きなデメリットに見えるかもしれませんが、映画やCMなどに携われている方々から見ると、アシスタントがいたり、確実なスライドが必要になる場面が多いためそこまで大きなデメリットに感じないかと思います。
高額な部分は誰しても悩める部分だとは思いますが。
フットワークの軽さが重要な撮影には全く向きませんが、そうでない撮影には力を発揮する素晴らしいスライダーです。
今からスライダーの購入を検討している方にはぜひオススメしたい一品です。
ショートスライダー版
ミディアムスライダー版